おいしさ

料理がおいしいかおいしくないかは、主観的なものである。これは大前提だろう。

その上で、食材に固有のおいしさがあるのも事実だ。むろん、おいしさそれ自体は、モノには存在しない。あくまで人間の側で、おいしいと感じるだけ。しかし、こちらは、より客観的な性質のものだ。

しかしおいしい料理の味付けは時代によっても、地域によっても、個人によっても異なる。素材の味を引き出すための調味料の使い方でもまさにそうだ。

先日も、ヴェジタリアンに反感をもった方が、鴨はおいしいねといった話をされていた。そこで言われているおいしさというのは、鴨それ自体がおいしいというよりも、鴨に味付けされているものがおいしいという雰囲気だった。

だったら、別に鴨でなくても、大豆をこねたものでもいいのではと思ってしまう。

先日久しぶりに焼き鳥屋に入った。タレは味が濃すぎるので、塩で頼んだところ、やはり化学調味料がなんのためらいもなく、つけられている。鶏自体にたいした味がないから、妙に味が分離していて、ひどい。

以前、ある焼き鳥屋で、塩だけにしてくださいというと怪訝な顔をされた。たぶん、焼き鳥屋からすれば、化学調味料をつけないと客がおいしいと言ってくれないから、つけているのだろうし、またそうしないと素材のひどさを隠せないからだろう。

ごまかしの料理で、おいしさを感じても、なんともはやという気がするが、おいしさについては、一度、まじめに考えておく必要がありそうだ。