一本化

ふたつに分けて書いていましたが、こちらに一本化します。

敗者への共感

昨日は横浜で、「頼政」をテーマにした平曲、狂言、能を観る。義仲の息子であった彼と、高倉宮とで平家討伐をたくらむが、兵を挙げたものの宇治平等院の戦いで敗れ、命を落とす。能のテーマには、このように無念の情を残したまま亡くなった人物が現われれて…

8.15

朝日新聞でのインタビューもあり佐藤『八月十五日の神話』を少し読み返してみた。この本が出版されたのは2005年だ。その直後くらいに友人らに8月15日の親和性を話すと、一様に、否定的な態度だったことを覚えている。さて、そこで指摘されているように、…

複数形への違和感

『テロワールとワインの造り手たち』という面白そうな本が出た。一段落したら読んでみたい本だ。ところで、このタイトル。違和感がある。「たち」という「複数形」。この場合、自然な日本語では、「造り手」だろう。欧語はたいてい単数か複数かを明示しなけ…

久々の能

昨日は、久々に、国立能楽堂へ。櫻間会の例会で、創作能 大友宗麟と、狂言 鈍太郎を。狂言は本妻と妾をめぐる鈍太郎の話。野村万作氏は相変わらず上手。話の筋は鈍太郎が遠くに旅をして戻ってきたら、本妻と妾の二人とも鈍太郎本人とは気づいてくれず、家に…

座り方と華

電車に乗って、たまにハッとさせられる時がある。それは美しい佇まいの人に出逢った時だ。着こなしが優れていることもあれば、所作が美しいこともある。そうした美しさが際立つのは、逆にそうでない人が多くいるからでもある(自分も客観的に見れば、そうだ…

いただきもの

Biomedical Ethics in Asia 昨年、著者3人で長い時間をかけて討議されていたものが本として公刊されたもの。助川幸逸郎『文学理論の冒険』東海大学出版会 某企画でご一緒している著者からの頂き物。冒頭の「絶望より不安の方が、人間が生きていくことを遥か…

ベンサム論

、こちらに7月の間だけ、ベンサムに関する文章を載せてもらっている。一般向けのつもりが、あまり読みやすい文章になっていないのは、なんとも恥ずかしいことながら、「マルクス入門」と期せずしてシンクロしている部分もある。お時間のある方は、ご笑覧く…

違和感

ちょっと必要があって読んだ渡辺喜美氏のプロフィール。 座右の銘はさまざまなミッチー語録。決断を迫られたとき「ミッチーだったらどう考えるか」と発想する。 決断力、度胸、歯切れの良さは父親譲り。政治家を志したのは中一のとき。新人議員だった父の話…

手拭い

温泉に行く度に、何か違和感を感じていたところ、先日、そうか、これはタオルのせいだと思い至る。ひなびた温泉などに行くと、人が湯船に浸かっている風景に、タオルがあると、なんとも変な感じがする。浮世絵などで、江戸期の風呂の様子を見ると、手拭いを…

動物性食品

現代の食生活で動物性食品が健康を害することについて異論はないかと思っていたら、まだまだこんなページがあった。気になったのは、以下の箇所。乳製品・タマゴ・肉などの消費が増え始めた40年前に比べ、心疾患は実質50%も減っています。こちらを見ると、…

精神論、保守、、、

たちあがれ日本のサイト。よく指摘されるように、ほとんどの党員は70歳前後だ。応援団長はなんと石原都知事。70歳になっても、政治という、どろどろした、しかも人の生活を左右する、恐ろしいほどの責任が伴う世界にいたいという精神構造は、どうにも理…

Christian Thielemann

N響のコンサートで、Philharmonyの6月号をもらったので、ぱらぱらとめくっていたら、海外動向 ドイツ・オーストリアのところで、ティーレマンがウィーンフィルと取り組んできたベートーヴェン交響曲全曲演奏を終えたらしい。しかも、第5は「オーケストラ…

ザ・コーヴ

明治大学も映画「ザ・コーブ」上映・討論会を中止だそうである。上映会・討論会を開いて、上映反対派による暴力事件を危惧したのだろう。明治大学も、外観とともに、大きく変わってしまったものだ。地元の漁協は 「イルカ捕獲は日本の伝統文化で、漁はすべて…

ブルー・ゴールド

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』をDVDで観る。映画は、『「水」戦争の世紀』(但し原著の75%の翻訳)に依拠している。さまざまな人が出演して(女性が多いのが印象的)、現在の水をめぐる競争と自然環境への破壊的影響について話す映像がひたすら…

国際貿易の理論

いただきもの。18世紀思想史概説にもなっている重厚なベンサム論も書いているJ.ヴァイナーの古典的著作。瞥見した限りでも、該博な知識とともに、面白そうな本なので、少しずつでも読み進めよう。もっとも、その前に懸案のいくつかの原稿をしあげなけれ…

Anpo

6.15 安田講堂シンポ国民的な運動と芸術の問題というテーマで、しかも安田講堂での開催とあって、これはぜひ行きたいと思ったが、残念ながら火曜日は夜まで講義があるので、行けない。。。先日、高橋和己の『明日への葬列』で、この安保闘争で国会に突入し、…

動物実験

資生堂のほかに伊藤園が動物実験の全廃を公言した。さまざまな事情も絡んだことだろうが、よい傾向ではある。ただ動物実験については、人間と動物は受苦的存在として、同じであるから、行なうべきではないというシンガー的な批判と、もう一方で、このビデオ…

いただきます雑感

食事をとる前に、両手を合わせて「いただきます」と言うのは、元来は、神仏と共に食事をとることを意味していたとどこかで読んだ覚えがある。昨今は、食べ物への感謝という意味合いで、あるいは、食べ物をいただけることに感謝して、「いただきます」と言う…

自然酒

寺田本家の2種の日本酒を飲み比べるというか、飲んでみた。ひとつは、「玄米酒むすひ」。 米の栽培方法/無農薬米 麹米/コシヒカリ 掛米/コシヒカリ 精米歩合/麹米 玄米・掛米玄米 酵母/自家培養 アルコール度数/7〜11% 日本酒度/-10〜-20 酸度/7〜13 ア…

映画

『ミツバチの羽音と地球の回転』が完成したようだ。同じ祝島が舞台になっている『祝の島』は知人の日記で知った。ポレポレ東中野では、今ちょうど『しかし それだけではない。加藤周一 幽霊と語る』がやっている。最近、講義で映像を取り入れるようになって…

The 2010 TIME 100

100人の顔ぶれを見てみると、あらら、こんなに白髪が増えてしまったんだと驚いたのが、Valery Gergiev最近、日本でも矢継ぎ早に翻訳が出て知られるようになったMichael Pollan。ちょうど『King Corn』を観たところだった。Pollanの議論に触発されて、このト…

いただきもの

金子 晋右『戦前期アジア間競争と日本の工業化―インド・中国・日本の蚕糸絹業』。昔聞いた印象では、「番手」の相違が市場の相違となり、日本の製品と中国などの製品の「棲み分け」が起こることから派生する経済史的問題を扱った論考。同時期に大学院に入っ…

動物の命は人間より軽いのか - 世界最先端の動物保護思想

功利主義理解で首をかしげる部分もあるけれども、生命、環境、食など、さまざまなものが密接に関連していることを改めて考えさせてくれる本だろうか。伐採のために森の動物が追われ、食肉にされて数を減らして行き、人間が住みかを広げていくことで行き場を…

いただきもの

渡辺浩『日本政治思想史―十七〜十九世紀』この先生の見事な話し方から書き方まで、大きな影響を受けつつも、自分の話し方や書いたものはそうはならないのが、なんとも残念次第だが、ページをめくると、江戸時代の日本の情景が浮かんでくる筆致には、いつもな…

マローンの合唱団

先日放送があった地球ドラマチックで、ギャレス・マローンが新たに作った合唱団のドキュメンタリーの放送を見た。2010年 3月 4日(木) 19:00〜19:40 『町中みんなで合唱団! 〜大聖堂への道〜』これは、NHKのオンデマンドでまだ見れる。元は「The choi…

フィギュア・スケート

オリンピックで、注目を集めていたフィギュア・スケートを観た。なんというか、昔に比べてずいぶんとスポーツになってしまったなというか、機械的になったなぁという印象を受ける。キムヨナ選手にしても、高得点の選手は高得点の技ができるだけで、芸術性や…

降りてゆく生き方

先日、降りてゆく生き方」のプレ上映会に行った。場所は池袋のたまにはTsukiでも眺めましょ。この映画を知ったのも、このお店に来ていたお客さんからで、興味深いと思ったのは、映画は基本的に自主上映であるということ。商業ベースに乗せたのでは、ただ見て…

君が代の演奏の仕方

1999年来、日本国歌となった君が代。国旗となった日の丸の法律はなんとも簡単なもので、大日本帝国国旗法案をほとんど踏襲したもの。さて、この旋律自体は悪くないと思う。ただ近衛文麿による編曲はどうだろう。Youtubeで、クラシックで訓練された歌い方のヴ…

市民的公共性

明日の報告準備で、読み直していたのが、成瀬治「『市民的公共性』の理念」。しかし<Public>を規範的な意味で、「人民全体に関わる」価値領域としてとらえる、古い歴史的思考伝統をもつ英・仏両国と異なり、<Öffentlich>を長い間たんなる状態ないし事実…