自然酒
寺田本家の2種の日本酒を飲み比べるというか、飲んでみた。
ひとつは、「玄米酒むすひ」。
米の栽培方法/無農薬米
麹米/コシヒカリ
掛米/コシヒカリ
精米歩合/麹米 玄米・掛米玄米
酵母/自家培養
アルコール度数/7〜11%
日本酒度/-10〜-20
酸度/7〜13
アミノ酸度/1〜6
開けるときは、本当にゆっくりしないと、炭酸ガスのせいで、吹き零れてしまう。アルコール度数は低いので、お酒というよりも、ジュース感覚。
酒蔵では最も忌避すべき火落ち菌さえ入っているお酒。善玉菌/悪玉菌という二分法の問題点を明らかにするような「自然な醸造」がこの酒蔵の狙いだが、多くの酒蔵では蔵内を殺菌しすぎてしまい、「自然な醸造」がそもそも不可能になっているというのは、なんとも難しい問題である。
ふたつめは、「醍醐のしずく」
米の栽培方法/無農薬米(コシヒカリ等)
精米歩合/90〜93%
アルコール度数/6.0〜15.0%
日本酒度/−40〜−70
酸度/6〜12
アミノ酸度/2〜6
※仕込みごとに数値が異なるため、おおまかな範囲を記して
あります。
精米歩合からして、ほとんど玄米のこのお酒。異様に甘く感じる。美味しい玄米はまさに甘いものだが、そんな感じだ。これは菩提酛という方法で醸造されているらしい。
現在の菩提山正暦寺(ぼだいせんしょうりゃくじ)に端を発し、鎌倉時代からの戦国の世にかけて編み出された、『菩提酛(ぼだいもと)』仕込みといわれる空中の天然乳酸と野生酵母(酒蔵では蔵付き酵母)を採り込んだ『そやし』という水をもとにして仕込みました。
まさに『生もと』の原型、酒造りの原点と言えるお酒造りに挑戦いたしました。そのままを味わっていただくため、割り水、ろ過は一切行わず、一仕込みごとに瓶詰めしています。仕込み時期によって味の異なる甘酸っぱいお酒です。
昔ながらの作り方をしたお酒が美味しいかどうかは、美味しさの規準によるけれども、最近の生酛作りの「流行」からすると、おいしいお酒に入るだろう。
乳酸菌や酵母の大量投入によって醸造時間を短縮し、大量に作ったお酒は、どこか人体に負担がかかることが多い。ましてやその乳酸が、場合によっては石油などから作られているとしたら論外である。
一辺倒な自然礼賛には問題はあるけれども、未だ、スローなあり方が省みられない現代の都市生活においては、大いに有効なアプローチだといえる。