自遊人

3月号は日本料理の特集。某お茶の先生のところで手にとって見たところ、写真やら文章やらが満載で、なかなか良質の雑誌なので、購入。

ぱらぱらめくるとふむふむ、面白いし、和食が食べたくなってくる。ミシュランで星をとったお店のシェフたちが話していることも興味深い。企画が優れていることが高い品質の雑誌を生み出している。

ただミシュラン東京があのような形で公刊されて、結局のところ、これまでの料理雑誌と一線を画したものにならなかったのは不幸なことだ。覆面調査なるものも、ほとんど意味をなしていなかった。まぁこうした点は多くの人が言っていることでもあるので、よしとしよう。

気になるのは、食についての語りが「詩的」でないことだ。味なり、店での体験を文章にするのは至難の業ではあるが、「美味しい!」と言って済むTVのグルメ番組ほどひどくないにせよ、語彙が貧困である。

詩的でないというのは、食材の舌触りや味へのこだわり、お店の設えなどの心意気だけに焦点を合わせることが多くて、その人個人の主観的な語りが少ないわけである。

豊かな食文化を豊かに伝えられないとすれば、それは食文化そのものが実は豊かでないことなのかもしれない。食文化を支える哲学や思想、そして食にまつわる詩的な表現の世界がもっと広がることを祈りつつ。。。