屁理屈

ロシア経済専門家の書いた『ビジネス・エシックス』という本が講談社現代新書にある。

冒頭では功利主義やカント哲学などについてアメリカのビジネス・エシックス本を使って解説しているのだが、少々驚いたのは、こうした「屁理屈」を論じていても仕方がないと断じていることだ。

屁理屈と言えなくもないが、そうした原理的な問いなくして、現実の諸問題に対処療法的にあたっても仕方がないのではなかろうか。

メタな議論が恐ろしく抽象的で、どこが現実と切り結ぶ論点なのだろうと分からなくなることもしばしばあることは確かだ。けれども異様に抽象度の高い問題を論じている論者にとって非常に生々しい問題が念頭にあるということには、上の著者のような人は想像が及ばないらしい。

現実現実と言いつのることが目の前の現実に拘泥してそれに右往左往させられてしまうことには十分自覚的である必要がある(丸山の「現実主義の陥穽」だったかにこうした議論があったような。。。)。