縦と横

アメリカのオーケストラによるベートーヴェンの演奏を聴いて、フルトヴェングラーがあれはドイツ音楽ではないと言ったらしいけれども、クラシック音楽の伝統のないアメリカでは縦の線を揃えることに気を遣うことが多いらしい(和声学的ともいえるだろうか)。

一方、ヨーロッパでは横の線を重視することが多かったらしい(だからなんともいえない艶やかな音色を響かせることができるのだろうか。ともあれこちらは対位法的と言えるだろう)。

今ではオケの楽団員がインターナショナルになり、グローバル化の影響もあって、こうした区分はあまり有効ではなくなっているが。。。

わが団の合唱指導者のK林先生が昔、別の団で合唱指導を始めた際に横の線を重視して指導したら、合唱好きの人がこんな指導は初めてだと驚いたらしい。

それまで、或いは現在でも日本での合唱は縦の線を重視して、いかに揃っているかが重要事になっているようだ。歌う方がそうだということは、聴く方もそうしたものを好むわけで、優劣の規準が縦に揃って歌えているかになってしまうのは必然だろう。

かくして生まれてくる音楽と横の線を重視した音楽。神経質なまでに縦にこだわっている人に出会うと、一つ一つの旋律だけを聴いて、全体を聴かない人のようにも思われてしまう。

(だいぶフルトヴェングラー礼賛気味だが)音楽は曲の「全体」からリズムなり、強弱なり、うねりなりが「自然と」生まれてくるのを楽しむことだと改めて感じた話だった。