一筋縄ではいかない環境問題

少し時間があったので、ブログを見て回ると、文明社会の二律背反的性格が原発問題に如実に現われていることが分かる。例えば地震対策に躍起になりながら原発を推進するという状況――地震による被害は津波、家屋の倒壊、火災などさまざまなにあるが、放射能汚染はそれこそ取り返しがつかない。また六ヶ所村の再処理工場から放射能を帯びた廃液が数ヵ月後に海に流されることを見逃しつつ、「地球に優しい」生活を訴える状況。。。

さて、与党、自民党「わが党の公約」には「九 エネルギーの安定供給と消費者利益の確保」としてエネルギー問題への提言がある。

「1 包括的エネルギー基本法の検討
  規制緩和・自由化が進む中で、地球環境問題を視野に入れつつ、エネルギー安定供給と環境問題の両立・環境問題と長期経済性の両立に対処し、市場原理の活用を原則とした包括的エネルギー基本法を検討します」。

 この「市場原理の活用を原則とした」という部分がよく分からない。効率性・経済性が支配する市場で、外部性たる環境の価値との両立はどこまで可能なのか。。。

 今回の六ヶ所村の再処理施設に見られるように行政による隠蔽という問題もあるが、他方でマスメディアでの報道内容がスポンサーによって著しく影響を受けてしまうことを考えると、一筋縄ではいかないだろう。

「5 原子力発電と核燃料サイクル体制の総合的推進
  安全確保を前提としつつ、原子力発電施設等立地地域振興特別措置法に則った、立地地域振興のための施策の抜本的な拡充強化や的確な情報提供・情報公開を通じて、原子力の円滑な立地を推進します。また、高レベル放射性廃棄物処分実施のため、安全規制の確立などによるバックエンド(核燃料サイクルの中の廃棄物処分のプロセス)対策の充実や、プルサーマル計画の着実な推進などにより、原子力発電と核燃料サイクル体制の総合的推進を図ります。」

 確かに現状では安定した電力供給が何よりも重要だというのは分かる。しかし原子力発電の推進という基本姿勢がある点で、「4 多様なエネルギーサービスの供給と選択が可能な社会の構築」というのは単なるお題目に過ぎないようだ。

「6 原子力防災・安全体制の強化
  原子力の確保はエネルギー安定供給の大前提ですが、これに係る安全確保及び原子力防災対策については、安全規制の責任を有する行政庁と原子力安全委員会によるダブルチェックを行うなど、より一層徹底した取組みをします。」

 原子力についてわざわざ2項目を立てていることから窺い知れるように、自民党のエネルギー対策は原子力一本やりだということが分かる。核の平和利用以外に、直接か間接かは分からないが軍事利用が目指されていることは確かだ。

夏には冷房をつけて快適な居住空間を確保しても、その結果不快な都市空間が生まれるという身近な問題から始めて、環境問題についてもっと真剣に取り組んだ方がよいのだが、環境問題は政治や経済的利害と絡み、さらには科学的知見の誤った利用といったさまざまな問題があって、本当に一筋縄ではいかない。。。