「右折」の恐怖

警察庁「今後5年間で2割減目標」だそうである。日常目にしていて危ないなと思うのは、矢印の表示が出る右折専用の信号機だ。2車線の道路などで直進のための信号が赤になって車が停止すると横断を始める歩行者が必ずいる。尤もたいていの人は歩行者用の信号が青にならないことに気づいて、戻るか進むか戸惑いながらその場にとどまっている。

危ないのは、車が停まったら当然歩行者用の信号は青になるはずだと思い、安全確認をせずに歩き出す歩行者だ。右折用信号は青になっている時間が短いので、結構スピードを出す車も多いから、危険度はさらに高まる。実際、右折ラインをスピードを出して交差点に突っ込んでくる車が横断歩道を渡り始めた歩行者に気づいて急ブレーキを踏んだ場面を何度か見たことがある。

まだ歩行者用の信号が赤にもかかわらず歩き出す歩行者の中には車の直進用の信号が赤になったのに、なぜ歩行者用の信号が青にならないのか不思議に思っている様子の人もいる。もちろん右折用が青になっているだけだとわかっている人は事故に至ることはないが、右折用の信号の様子は歩行者側からはよく見えないので、こうした点は改善する必要があるだろう。

改善するポイントとしては、現在の車優先の道路利用ではなく、歩行者優先の道路利用という点から考える必要がある。「弱者」の視点から改善を考えると、それはほとんどの「強者」にとってもよいシステムになることが多い(コストの問題は措いておく)。

そもそも日本では信号のない横断歩道で車が停まることはほとんどない。また郊外を走る場合でも、沿道に家々が並ぶところでは減速すべきだが、まるで家々などがないようにスピードを落とさない車が多い(さらに高級車に乗っている人ほど概してマナーが悪い。悪い意味での庶民性の露呈)。

関東の人が関西や名古屋では車のマナーが悪いというが、こうした点では五十歩百歩でしかなく、日本ではおしなべて車のマナーはあまりよくない(沖縄はまた少し違うようだけれども、行ったことがないのでわからない)。

高速道路で車線変更をする場合、方向指示器を点滅させてから数秒後に車線を変更すべきだが、見ていると、たいていの人は方向指示器を点滅させると同時にハンドルを切り始める。なるほど、指示器を点滅させるためにレバーを動かす方向とハンドルを切る方向は同じだから、自然と同じ動作になってしまうのはわかる。しかも高速道路だからそれなりにスピードも出ているからなおさらだ。しかし車線変更をしながら方向指示器を出すのと、方向指示器を出さないで車線変更をするのとでは大した違いはないから、こうした点で地方では方向指示器を出さない車が多くて怖かったというのは当てはまらない。

その点、イギリスをドライヴするとそのマナーのよさに驚く(これで天候と食事がよければ。。。)。郊外の細い道で時速100キロ近いスピードを出すのにはまいるが、それも見通しの悪いところに車を停車しないというマナーが徹底されているというか、そうしたことへの信頼なり信念があるからだろう(それでも万が一に備えてスピードは出しすぎない方がよいと思うが)。

信号機については、まだ問題があるようだ。いわゆる時差式の信号機である。こちらのサイトにこのような事例があった

「私は、普通乗用車を運転し、午前8時頃片側2車線の道路の中央で右折のため停止していました。対向車線には50mほど先にオートバイが走行してきました。私は、対面する信号が黄色から赤になったので、対向車線の信号も赤になったと思い、右折をしました。そこへ、さきほどのオートバイが突っ込んできて、私の車の左側面に衝突し、転倒し、運転者は死亡しました。
私は、その交差点は初めて通りますが、時差式の信号で、私に対面する信号が赤でも、対向車線の信号は11秒間は青色である、時差式の信号だそうです。私は、時差式の信号であることも知らず、時差式信号であることはどこにも書いてありません。
この場合、私に責任があるのでしょうか。私は、時差式信号などというものがあることも知りませんでした。」

このケースでは「1審で無罪、2審で有罪、3審(最高裁)で有罪」「裁判所は、「車の運転者は、対面する信号を見て対向車線の信号を予想することが許されない」と」少々無茶な判断を下しているが、「このような信号は危険なものであることを考慮し、死亡事故にもかかわらず、判決は、「禁固1年、執行猶予2年」」だったらしい。判例を詳しく読んでいないが、これは管轄する警察署や公安委員会の責任が相当程度大きいのではないかと思われる。もちろんこうした事故が起きないように配慮された時差式もあるが、そうでない時差式の信号があると知って驚く。

いろいろ不祥事を抱えた神奈川県警だが(最近はどうだろう。もちろん神奈川に限ったことでもないだろうけれども)、「交通死亡事故事例からみた危険予知のポイント」として手際よくまとめてくれているので参考になる。