帰国

昨日、無事に帰国する。予想通り帰りの機内では寝られなかったので、体内時計があちらのままになっていて早起きとなる。

さて前回の仏滞在記に買いたことでご指摘を受けた。ノリントンのノンヴィブラートの件で書いたことは弦ではなく弓の使い方のこと(早速文章も訂正しておく)。

以下は続き。

3/8(Wed.)
朝食はホテルのそばにある「Paul」で。午前はノートルダム寺院のそばにある「公的扶助に関する博物館」に立ち寄る。概してフランス革命前は教会・僧院が中心となって病人・捨て子・赤子などの扶助に当たっていたのが、革命後、行政行為としての公的扶助が整備されていく様子がよくわかる。パリの歴史における分水嶺のひとつは革命および啓蒙思想にあるようだ。

興味深かったのは、市立病院(Hotel-Dieu=神の館)の1785年の立替プロジェクトの模型。中心に塔があって円形のものだった。ベンサムパノプティコンは当時のフランスにそのモデルが既にあったというフーコーの指摘を裏付けるものか。。。マイナーなミュゼーかと思ったが、受付に6人もいて、パンフレットを買わないかと薦められる。

お昼はシャトレ界隈にある「ラ・ローブ・エ・ル・パレ」。通りの名前と番地しかメモしていなかったので見つけられるか不安だったが、難なく見つかる。このお店も当たり。チーズコロッケとサーモンのサラダはマスタード風味のドレッシング。

ポアソンは昨日の魚に似ているが、バジルソースで、煮込んだ野菜を添えたもの。触るとびっくりするくらいの熱さのお皿もポイントが高い(布を使ってお皿を運んでくる)。美味。赤ワインと一緒にすぐさま平らげる。パンももっちりしていて日本人好み。

食後のお茶のカップが面白い。

午後はホテルにこもって『かの高貴なる政治の科学』。夕刻、帰国の準備と思って荷物を整理し始めた時にはじめてワインをどこかに置いてきたことに気づく。記憶をたどるとニースから戻ってパリのシャルルドゴール空港で切符を買った際、床に置いたまま忘れてしまったらしい。ハーフボトルの美味しい赤ワインだったので大いに悔やまれる。

さて夜はパリ管の演奏会。まずはヴァンゲロフが登場してのヴァイオリン協奏曲。会場に着くと当初ショスタコーヴィッチだったものが、ベートーヴェンに変更になったとの張り紙がある。どのような事情かわからないが、前半はオケの調子もいまひとつのような気がした。C氏から最近のヴァンゲロフはスポーツタイプになったと伺っていたので、身を乗り出して演奏の様子を見ると、確かにそんな感じがする。またソロの部分でしっかり音に乗らず、先を急いでしまっているように思われたのは残念。しかし巧い。

(今回の演奏会会場であるモガドール劇場はまさに劇場スタイルで座席の前後が狭く勾配があるので、一番先頭の人が身を乗り出すと、その後ろの人はすべて身を乗り出さないとステージがちゃんと見えない。また音響の増幅装置があるらしく、音の広がりがやや不自然な気がしてしまう)

しかし愛着のあるオケの演奏は楽しい。後半は全曲版『火の鳥』で、あっという間に終わってしまう。管の調子が時折悪かったけれども素晴らしい演奏だった。まとまりもよく全体が見事に調和していて、聞くたびにどんどん磨かれていくような印象を受ける。営業ではなく楽しみながら演奏する数少ないオケで、できるだけよいものを観客とともに分かち合うことを楽しみにしているような雰囲気がある。幸福感に包まれてホテルに帰る。

3/9(Thu.)
朝、またもや「Paul」で朝食。カフェに行きたいところだが、お茶一杯で3ユーロ以上とられるので、前半のパリ滞在以外ではカフェは断念。その後付近を散歩して、回数券消化のためにマドレーヌ教会そばにあるフォションに行って見る。日本人の店員が3人ほどもいるのに驚く。ワインなども結構な品数をそろえているが、少し上乗せされたお値段なので買う気にはならず。コーヒーなどのお土産を購入。

4泊したホテルはこんな感じの階段を5階(フランスでは4階にあたる)まで登る。レセプションは2階(1階)で、一度ホテルを出ると、またあの階段を登るのかと思い少々の忘れ物では取りに行くのが躊躇われるほど。。。

空港までのRERの切符をクレジットカードで買おうと思うと、支払い拒否の画面が出て使えないのには参った。いずれのカードも駄目で、仕方なく残金の8ユーロの現金で切符を購入する。

空港でチェックインを済ませたら、忘れたワインのことを尋ねようと思っていると、13時20分発の便なのに搭乗時間が12時30分になっている。少し遅めの電車に乗ってきたので、忘れたワインのことを聞きに行く時間もなく、おみやげ物もほとんど見ることができずに搭乗することになる。。。

ともあれ今回のフランス旅行ではクレジットカードをIC付きにしないといろいろ不便なことがあるということを知った。IC付きのカードの場合、利用の際に暗証番号を入力することになっているので、それなりに不正使用は防ぐことができるので、信頼性でも安全性でもIC付きの方がよいようだ(その点、日本のクレジットカードやキャッシュカードの主流はまだIC無しのようなので、切り替えを急いだ方がよいのではと思われる)。

さていろいろたまっている仕事を片付けていかないと。。。