捻じ立ての様子

昨年、信州上田の本松氏宅にて、古越前の捻じ立て技法を拝見した。年末の個展の際、ギャラリーで改めて捻じ立て技法の極意をお教えいただいたのだが、どこまで公開してよいものか考えあぐねていたのでなかなかHPにアップできなかった。

本松氏自身は全部公開してもよいと仰っていた。公開しても捻じ立ての技法はそんなに簡単に身につくわけではないし逆に公開することで捻じ立てを身に付けたいと考えている人の役に立たせたいということであった。

ちなみに捻じ立ての修行をする際は轆轤を数年、時には10年は触ってはいけないらしい。それほど技法が異なるのだと言う。

ともあれそれほど寝かせているわけにもいかないと思い、先ほどアップしてみた。こちらがそれである。

コテを使ってのばしていく際に、全体を3分割して、まず上を伸ばし、次に下、そして下から上へと延ばし、中は伸ばさないといった極意に近い点は数年の内にまとめる本の中で公開しようと思うので、明記はしていない。

古越前でこうした技法が独特に発達したというよりは、東南アジア全域でこうした技法は存在したらしく、中国の天目茶碗と同様に消えていった技術のようだ。

古越前(こうした言い方自体も新しいようだが)の技法として平安期より伝承されてきた理由はよく知らないが、捻じ立ての技法が必要とされた一つに蛸壺があるらしい。

海底に沈めて蛸を取る壺であるから、頑丈である必要があった。捻じ立ては轆轤成型と異なって土を捻じって複雑に絡み合わせるので強度がある。

かつて本松氏はお師匠の藤田氏から焼成前の捻じ立て成型の壺を壊しておいてと頼まれた際、壺を割れるほどに強く蹴ったらしい。ところが壺はころころと転がっただけで割れなかったらしい(ワイングラスのトップテンのようだ)。

このような独特な成型技法である捻じ立て。昨年のある時、本松氏から習得してみますかと聞かれた。やってみたい気持ちはあったが、あのクルクル回る動作を思い浮かべ、少し躊躇してしまった。三半規管が弱いのか、あのような動作をするとすぐに目が回ってしまうのだ。

けれども、土を中心にして人間が回る動作も、右回り、左回りを交互にすることで目が回らないように工夫されているらしい。。。

来月くらいに取材として伺う時に一度は挑戦してみようと思う。