愛国心教育

9月の某研究会で取り上げられる『応用倫理学講義 経済』をぱらぱらめくる。

その中で森まゆみさんが地域の活性化という文脈で、こう語っている。「私たちの地域には、『ここに住みたい』と思って住んでいる人の割合が最近ではとても多い。そうすると地元を大事にしようという気持ちも生まれます」(270〜271頁)。

近年右翼(冷戦崩壊以降、右翼左翼という区分はあまり有効でない。誹謗する際の「反動」概念に近いだろうか)が強調する愛国心の教育というのは、まさにこの論点に関わる。

近代日本の歴史が自虐的に描かれようが、事実は事実として正視する態度が必要なのだが、些細な実証分析に陥り、素晴らしい近代日本の物語をイデオロギッシュに紡いで、子どもたちに日本への愛国心を醸成しようとするのが愛国心教育の内容であるとひとまずは言えるだろう。

けれども、どのように素晴らしい物語を紡ごうとも、現在の日本社会が荒廃していては何にもならない。

彼らは愛国心の教育をして現代社会の荒廃に対処すべしと言うが、順序が逆ではないか。

これまでの残虐な歴史を正しく見据えた上で(もちろん残虐なだけの歴史などは存在しない。常に明と暗を見据える必要がある)、その反省に立ち、現在の日本をよりよい社会に変えていく。現代社会の荒廃に対処すれば、自ずと自己、周囲、地域への愛着は芽生えるだろう。そうして地域社会を活性化していく。

現代社会の荒廃とは、政官財の癒着の問題に始まり、日常的なレヴェルでは昨日取り上げた音漬け社会などからの脱皮だろう。

そうした諸問題を解決すること抜きに愛国心教育をすることは虚偽意識という意味でのイデオロギーでしかない。

だから東京都教育委員会が国旗・国歌を強制するという態度は、何の利益にもならないどころか、良心に従う自由を大人や子どもから奪っているだけの愚かしいことだ。

日本の国家体制が素晴らしいものであるならば、子どもたちは自然に国に対して愛着を感じるから、国旗や国歌を強制する必要はない。

東京都教育委員会が国旗や国歌を強制する暴挙に出ているのは、都知事があのようにどうしようもない政治家だからという理由もあるが、国の病理を根治するには長年月が必要なので、短期間で一見成果が上がるように思われる国旗や国歌の強制をしているだけである。

要は業績主義であり、スタンスの問題なのである。実質的に愛国に足る国でなくとも、愛国の姿勢こそが重要なのである(まさに戦前的思考!)。

けれども、国債の乱発や特別会計などの計上などから肥大化する財政赤字、弱者を切り捨てる政治や行政、人殺しでしかない戦争に邁進する国家に子どもたちは愛着を感じるだろうか。

国家の根本的な病理の解決を先送りして、『戦国自衛隊』や『亡国のイージス』のようなご都合主義的な映画を製作し、自衛隊のイメージを向上させる姑息な手段をとっていてはいけないのである。

朝都内から一路、勝沼へ。9時30分には勝沼に到着。ワイナリーの丸藤さんは11時からの予約だったので、近くをぶらぶら歩く。

たまたまグレースワインで有名な中央葡萄酒さんを通りかかり立ち寄る。葡萄やお茶、ワインをご馳走になる。とくにここの甲州種の辛口は本当にすっきりしていて驚く。

そこで葡萄作りをされている方はとてもがっしりとした方で、信念をもって葡萄作りをされている様子が伝わってくる。

11時からは丸藤さんでワイナリー見学。案内役は安蔵さんという女性で、フランスで3年ほどワイナリーの仕事をされ、この3月からまたここで働くようになられたらしい。

醗酵中のワインを見る。5年ほど前、ウィーンに滞在した折、シュトゥルム(Strum)とモスト(Most)を飲んだことがあるが、それに似ている。ワイン版盗み酒といったところ。被せられているシートをとると、醸造所の中に醗酵中のワインの香りが広がった。

ワイン用の垣根の葡萄畑を見る。摘んで食べてみてくださいとのことなので、シャルドネソーヴィニヨン・ブランの実を食べてみる。甘みがあってより美味しかったのはソーヴィニヨン・ブラン

3種類のワインの試飲もさせてもらうが、友人から美味しいと聞いていた葡萄ジュース(白、赤)を試飲して、その美味しさに、即購入。

それから某先生のご親戚のお宅で山の野菜をふんだんに使ったお昼をご馳走になり、葡萄のお土産も頂戴する。斜面にあるお宅で、下から吹く風が心地よく家の中を通り抜ける。

さて合宿の地、小淵沢へ。早めに到着したので、某先生の山荘でくつろいでから、発声練習と合唱の練習(「シェナンドウ」と「故郷」)。

夜は「きままや」という近くのお店へ。大量にお酒を持ち込んでの夕食会。某さんが持ってこられた、一般に販売されていない自然農法の日本酒が美味しかったが、名前を失念。氷で冷やした大葉入りの水餃子も美味。

ペンションに戻ってからは、某さんが持ってこられたししゃもの干物で赤ワインと日本酒を傾ける。都内とは違って、涼しい土地で夜を過ごすのはよいものだ。