映画

いまさらながら『Fast Food Nation』のDVDを観る。ファーストフード産業にまつわる食の安全、自然や社会の環境破壊、不法移民労働、大企業の利益優先主義などの問題に光を当てたものだが、いまひとつ論点が絞り切れていない。

それは一つには、当のファーストフード産業従事者、不法移民労働者、屠畜工場労働者、牧場経営者、学生などのさまざまな視点が入り組んでいて、まとまりにかけたからかもしれない。

それが狙いだったのかもしれないが、最後の牛の解体の様子は、『いのちの食べ方』とは異なって、センセーショナルなものだった。

また録画してもらっていたNHKのBSHi『忘れられし王妃―イラン革命30年、ふたりの女性の人生の空白』も観る。

イラン革命により追放された王妃と、追い出したものの、結局その後の「弾圧」からスウェーデンに亡命した映画監督という二人の女性がメインのキャスト。映画監督による王妃へのインタヴューを通して、イラン革命によって変転した人生を送った二人の女性の考え方、生き方に迫っている。

どちらも「情況」というか、運命というか、政治的な動きに翻弄された人生であり、その中で、王妃は愛娘、映画監督は実弟の死に自らが関わってしまったことへの自責の念を抱えている。身分も環境も、政治的立場もまったく異なった二人が、人間的に共感可能な心情や信条をもっていたことを通して、お互いの違いを認め合おうとする。

これは革命というものが果たして歴史的にどのような意味をもつのかについての重要な一視点を提供していることは確かだ。ただ両人ともイラン革命後のイランの情況にはほとんど関知できない国外の人であるから、ここにイラン革命後、イラン国内で生きた人物の視点が入ると、さらに問題は浮き彫りになったのではないかという印象をもった。