聖書

田川建三『新約聖書 訳と註 1 マルコ福音書/マタイ福音書』を入手。百数ページの本文と、7百数ページの脚注。新約聖書学(これをよく神学と勘違いしている人に出会うけれども、両者は一応、まったくの別物)の日本における第一人者と言ってもいい人物のものだけに、これから読み込んでいくのが楽しみな本である。

解説あたりに、岩波版の聖書翻訳について述べられている箇所があった。岩波版は中古ながら分冊で手に入れていたが、その後、合本されているのは知っていた。

田川氏によると、どうも分冊版と合本とでは、とくに福音書において、そうとう修正が施されているとのこと。氏曰く、数年で本文を相当修正しなければならないとは、なぜそんな低レヴェルの段階のものを出版したのか。

確かに、商業出版社からだから、福音書が2つ入って3千円ちょっと、というお値段だから、出版に際してはちゃんとしたものを出してもらいたいのは当然。

岩波版は荒井献氏が中心になって作ったもののように思われるが、本文を読んでいると、アレッと感じるところがちょくちょくあったのは、適切な直観だったようだ。

結局、信頼できる日本語訳聖書は、この田川版が決定版なのだろう(それ以前では、ある程度ちゃんとした脚注がついているカトリックのものだけだろうか)。

こうした仕事を見ると、自分の仕事もしっかりしなければと反省させられる点で、いい刺激になる。