井戸茶碗

月曜日は井戸茶碗のセミナーへ。柔らかく、貫入があり、色の変化が少ない、「最低」の陶器が「あすなろ」井戸茶碗。このお茶碗が諸々の茶人、とくに秀吉の心を捉えたということで、興味深い話。

セミナー後半部では、実際に先生が持参された井戸茶碗や、井戸をはじめとする高麗茶碗のスライドを見ながら、いかに「汚い」お茶碗が珍重され、それを美しいと茶人達が感じたのかという話。

そもそも茶人たちの世界はアブノーマルな世界であり、多くの人々の常識に反する「非常識」の世界の価値をこそ追求したのだという話は面白い。

しかし、今は大勢の常識の世界に堕してしまっているのではないか、これから暑くなる季節には涼しげなものを席中に用意するといった季節に見合った趣向などというものは、実につまらない。

「逆手」にとるというか、多数者に対する少数者の独特な世界が一般化すると(これは既に江戸初期から始まっていることだろうけれども)、初発の衝撃的な価値観が固定化されて、ずるずると大勢を占めるようになって、つまらないものになってしまう。

だから途中に何度も新たな動きが起きて、新しいいのちを吹き込むわけだが、これからの茶道のあり方など、ちょっと考えさせられる話だった。