月釜

一ヶ月ほど前にお話を伺った月釜に出向き、久しぶりにお茶の空間に身を置く。

朝8時開始という「早朝」のことで、やや眠気が漂っていながら、清々しい雰囲気のお茶室で一挙に目が覚める。

寄付で待っていると、
お茶の先生(にこやかな笑顔と共に)「今日のお正客は貴方ね」
私(恐縮しつつ)「しかしお正客をするには、まだ入門小習の身ですから...」
お茶の先生(さらに気持ちのよい笑顔と共に)「だから勉強になるのよ」

ということで、お正客に決定。寄付にある淡々斎のお軸の寂びた風情がより一層寂びているように感じられる。

しかしよいお茶碗で戴けるのかなと期待しつつ席入。席主は5年ほど前に裏研でお世話になったI先生。豪快な話しっぷりの方で、楽しいお席になる。

三客に入られたお茶の先生から正客としてのご指導を仰ぎつつ、まずは初炭。お釜も中空のカンも侘びていてよかったのだけれども、火箸がよかった。

所謂六角の釘を見立てたもので、取っ手の先に蟹の形があしらっており、よい景色。なんでも還暦のお祝いにもらったお品だとか。

点心がまた素晴らしく、水屋の方々が長野から運ばれてきた山菜や野菜を調理されたもので、あっさりとしていて、かつ力強い菜の味がする。自家製梅酒も、嬉しい添え物。

さてお濃茶は随分と薄く練られたものだったが、古唐津の茶碗で高台の削りが気持ちのよい線を出していたし、水指はメキシコ製のガラスのワインクーラーで涼をとり、違和感なく席に溶け込んでいた。

本席のお軸は「潅水湛如藍」。想像するだけで爽やかな心持になるが、お花は楚々とした雰囲気の撫子。水指にも使っているという口の広いものに活けられていて、その水面がまた一層涼しげに感じられる。

お薄ではいろいろ金継ぎされた古萩の茶碗。萩も古くなるとこうなるのかという不思議な色合いのお茶碗で、I先生が初めてお買い求めになられたお道具とのことで、あれがはじめてのお道具とはさすがお目が高いなぁ。

2時間ほどのお席。途中から足の痺れも増す一方で、時折辛いところはあったものの、意外に大丈夫だった。

さて午後も用事があるので、これから早く月曜日の準備をしなければ!