近衛秀麿

お昼過ぎ、朝日カルチャーセンターで、お孫さんの水谷川優子さんが語る祖父近衛秀麿という公開講座に行ってくる。

「お鮨オーパー」というあだ名の思い出話から始まり、ご自身が受けた全人的影響、そして秀麿にまつわる様々なエピソードまで、チェロの生演奏、CDやDVDを用いての解説を楽しく伺う。

生演奏のチェロでは同じ床面にいたせいか、チェロの弦に共振するかのような床の振動が心地よく、通常のコンサート会場とは異なるチェロの調べを聴く。

今回の講座ではとくに近衛秀麿『風雪夜話』からの引用を散りばめられていたが、例えば、身体を通して演奏を作っていく、人間的なものが演奏に現われ出てくるといった話の中で、下手なプロではなく、上手なアマチュアになれといった秀麿の言葉を、演奏を作り上げる楽しみや音楽の素晴らしさを感じ、音楽に対して畏敬の念を抱く者こそが音楽家としての条件であるといった点はとても共感する。

また水谷川さん自身が一期一会ということをいつも心に刻んでいるという話の流れで、百回弾いたら、百回異なる演奏体験を自らもし、お客にもしてもらうということを意識するという話も興味深かった。もちろんこれは意図的に異なった演奏をするのではなくて、一生懸命に曲に演奏に没頭することを通じて自ずから生じてくる一期一会的な要素のことである。

また水谷川家での音楽指導は頓知のような禅問答のようなことが多かったと話される中で、それはやはりどこまでも音楽は身体で納得して初めてその人のものになるので技術的にどうこう言ってもそれは指導にはなるかもしれないが、本人のものとはならないという信念からのものであったというお話も、まことに得心いくものだった。

こうした身体性の問題は徒弟制的なシステムが行なわれていた芸術家や職人の世界では当たり前のことなのかもしれないが、ともすれば忘れ去られがちなことでもある。

当初、1時間30分の予定だった公開講座は結局(予想通り!?)2時間以上のものになったが、後半どんどん興に乗って話される水谷川さんのお話はこのままさらに続いていくような雰囲気だった。話すときのお手本としたい。

夜は家族で溜池山王の「かえりやま」へ。

8時間ほど煮た鴨肉のペーストに始まり、鶏肉のローストと南瓜のムースにコンソメゼリーが添えられた前菜(南瓜のムースがとても力強い味わい!)、トマトと海老にトマトのゼリー風スープ(絡められているソースのお芋が何なのか聞くのを失念。さっぱりしていながら、絡められているお芋が美味で、パクパク食べてしまう)、メインはお魚料理、甘く柔らかい季節の野菜に白身魚(確かかますだったような...)のポワレ(相変わらず絶品)、デザートはシャーベットがかったマンゴーのムース(アイスクリーム添え)。

少々食べ過ぎてしまうが、月曜日の報告準備をちゃんとしなければと思いつつ、早くも睡魔に襲われている。。。