The remains of the day

夕刻から随分と強い風雨となった都内。満開の桜の花も一挙に散ってしまったことだろう。春雷が轟いたのには少々驚く。。。

先日、T氏から借りた『日の名残り』を観る。執事と言えばイギリス。イギリスと言えば執事とまでは言えないが、『召使たちの大英帝国』を入手したばかりだったのでよいタイミングだ。この本によると、1891年のイギリスには10歳以上の女性の10人に1人、15歳〜20歳だと3人に1人が召使として働き、全国で138万6千人の召使いがいたと言う。

さて『日の名残り』はダーリントン・ホールに務める冷静沈着を範とする執事(A.ホプキンズ)が主人公の物語。映画の舞台はほとんどがこのダーリントン・ホールで、二次大戦に関わるナチスとの取引などが展開する中、執事の生活というものにスポットが当てられている。

彼が密かに思いを寄せていたミス・ケントンとのやり取りは感情に揺さぶられない執事というイメージを少々デフォルメして、時に皮肉を交えながらユーモラスに描かれている。あまりにそっけない彼の態度に業を煮やしたミス・ケントンが彼の心を試すように結婚をするのだと宣言したところ、引き止めるどころか「おめでとう」としか言ってくれない。悲嘆の涙に暮れているところに彼がやってくるが、言い忘れた仕事の話をしただけで去ってしまう。この辺りの描写は対人関係がスムーズに行かない何かの病気ではないかと現代ではレッテル張りされそうなほどだ。。。

ただこの自らの感情に素直に従えず思い人を失う男の心理はとてもよく理解できる。この点だけで言えば『シラノ・ド・ベルジュラック』もこの系統か。。。