茶杓

一昨年の秋、或るお茶事で自作の茶杓を使ってもらったことがあった。拝見の際、同席された粋な方が褒めてくださり、煤竹や皺竹などの竹材を戴くことになった。

竹材を戴きに伺った日のこと。某駅から15分ほど歩いたところにある某所の庭はすっかり掃き清められ、お茶室は「芳輪 堀川」の香りが溢れる。清浄な雰囲気の中、まぁ一服とお茶を戴く。それからごそっと出された竹を適当な長さに切ったりしてまとめ、送って頂くことになった。

竹材のことが一段落したので、また茶室に戻り、ご自身が削られた茶杓を見せて下さる(そしてここからが段々話が怖くなってくる)。そのうち、或る箱におさめられた茶杓を出されて、「これはもらった茶杓だが、こんな茶杓は削ってはいけない」と言われる。

なるほど、確かに面白みのない茶杓だ。いわゆる茶杓の形にはなっているのだが、なんというか、茶杓という雰囲気が感じられないで、匙に見えてしまう。。。

その後、数本出されて、「こういう茶杓を削らないと駄目だ」と言う。折撓の見事さもさることながら茶杓自体に凄味がある。さらに共筒や箱も洒落ている。その方が認めるだけあって凄いのだが、専門の職人ではなく某御茶屋さんのご主人の作だという。。。

貴重な竹を頂戴したのはよいのだが、こうした次第なので、それ以来、おいそれと削れなくなってしまった。早くよい茶杓を削るためにまだまだ勉強不足というか、目が養われていない(手もそうだが)。しかし25日の茶杓削り会に参加することにしたので、そのために竹を選んでみた。

竹の枝が伸びる部分には樋が入るが、それがよい具合に入った竹を選ぶ。


通常2本しかとれないところを、Jさんに手伝ってもらって、このように切って3本分を確保する。

これらをもう少し細く割って、水に3日間ほどつける(煤竹はとても乾燥しているので、水に沈むくらいまでつけておいたほうが枉げる時に失敗しない)。3本とも景色がよさそうだが、煤竹で胡麻が美しい真ん中の竹はどのような形に削るか悩むところだ。

ともあれ、明日の準備をせねば。。。今日もまた徹夜の勢い。。。