フルニエ

夕刻、ピエール・フルニエが1972年に虎ノ門ホールで行なったバッハ無伴奏組曲、第1、3、5番のライヴ録音を聴き流す。中野雄さんが襟を正して聴かないといけないような雰囲気をもっていると評したフルニエだが、「気品」ある演奏という評価に同感。

 彼がナチス占領下のフランスに敢えて留まり、活動を続けたという事情も聴く者に気骨さや精神性といったものを感じさせる要因かもしれない。尤も技術的には最近のチェリストに劣るのかもしれない。しかし昨今のコンクールでの競争が災いして技術至上主義に堕している傾向からすれば、フルニエの演奏は内面的に訴えかける(このような曖昧な表現はよくないのだが)素晴らしい演奏である(途中の重大なミスは置いておくとして…)。