己丑

新年を迎えたものの、気分は晴れない。

年末から年始にかけて、ガザ地区へのイスラエル空爆による虐殺が続いているし、日本では、解雇によって行き場を失った派遣労働者が大量に出たりといった重大な問題が起きている。

帰省すると、普段見ないテレビを観るのだが、ウィーンフィルのニューイヤーでは、その年の指揮者がたいていちょっとしたスピーチをするのとは裏腹に、今年のバレンボイムは中東に正義をと言うだけで、言葉少なだった。

イスラエルという軍事国家が歴史的に行なってきた所為に対しては、パレスチナの側も暴力で応じてきた。そこには、相手を攻撃する理由はあるかもしれないが、正義はない。

ただ戦後の両国の人々が生活の中から得た相手への恐怖感というか、反感というか、憎悪というか、そうしたものを拭い去るには、あまりに状況が過酷だ。

寛容という言葉を、部外者が語りかけることはできないところで、敢えて遠くから声を掛けるとすれば、九条の精神ということになるのかもしれない。

日本でも世界でも、苦境に立たされる人の数は計り知れない。今年が少しでも、よき年となることを。